Concept(目的)

ブランディングとアイデンティティ経営の先端研究と教育をめざして

企業や組織の戦略的なブランディングやアイデンティティ経営の考え方は、1960年代のアメリカ企業の本格的なコーポレートアイデンティティの導入に始まったといわれている。
たとえば、トーマス・ワトソンJr.は、自社をIBMという3文字のブランドで呼称し、企業理念の構築とともに世界戦略に出て行った。彼は、イタリアのOlivetti社に触発されて、IBMにコーポレートデザインの思想を導入していった。その後、Coca-Cola、Mobil、 3Mといった企業がコーポレートアイデンティティを導入していく。ちなみに、コーポレートアイデンティティは、Lippincott & Marguliesが創作した言葉といわれている。
それは、産業革命が終わり、人々が大量生産・大量消費といった、皆がある一定以上の豊かさを享受できる時代の到来であった。グローバルなメガ企業が生まれ、世界は経済と産業の時代を迎えた頃である。
あれから時代は大きく移り変わり、世界は情報革命という津波の真っ只中にある。マス経済は加速度を増し、グローバルスタンダードの名の下に競争は一段と激しくなっている。
企業や国家のあり方は、あるいはその経営の主体であるべき人間のあり方は、どれだけ進歩し成長したのだろうか? 
企業は何のために、誰のためにあるのか。どんな姿が人間にとって豊かで幸せなのだろうか。
21世紀に入り、私たちはそんな本質的な問いを、改めて真正面から問いかけることが求められているのではないだろうか。

本書では、そのような問いに答えることによって、自らの成長を持続的なものにしようと努力する企業や地域にスポットを当てて紹介してきた。そこには、人々に感動を与え、生きる意味を考えさせてくれるアイデアが詰まっている。ブランディングやアイデンティティマネジメントの意味はそこにあると、私たちは考えている。
ワールドブランディング委員会は、世界の企業や組織の戦略的なブランディングやアイデンティティ経営に関係する分野の先端的な情報、動向を、ニュートラルな立場で情報収集し、研究するために活動を始めたところである。
従来の既存の経営学やマーケティング、デザインという分野を越えて、文化人類学や心理学、哲学といった様々な分野が融合し、人々に豊かな安心と歓びを提供する企業や組織のあり方を問い続けて生きたいと考えている。またその考え方や方法論を次世代の人々に伝えたいと願っている。戦略的なブランディングやアイデンティティ経営の考え方や方法の教育と学習のためのプログラムの開発も行っていきたいと考えている。たとえば、私たちは、ビジネススクールにデザインやコミュニケーション、心理学や文化人類学の有用性が紹介されるべきだし、デザインスクールはもっと企業経営者がわかるデザイン論を展開するべきと考えている。
私たちは、世界中の企業や組織に関わる人、リーダーシップをとられている方が、横断的に交わりながら、新しい来るべき時代に貢献していただける方の参加を待っている。

ご意見・ご質問 > info@worldbranding.info